大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(ウ)898号 判決

被申立人が申立人を債務者として東京地方裁判所に対し昭和三〇年八月二八日本件不動産について仮処分の申請(同庁昭和三〇年(ヨ)第五、〇二六号不動産仮処分申請事件)をなし、右申請に基いて、同裁判所は翌二九日に、「申立人を債権者とするところの、本件不動産に対する同庁同年(ケ)第三九六号競売手続は、これを停止する。」旨の仮処分決定をなしたこと、右仮処分申請に先立つ昭和三〇年一月一四日に、被申立人は申立人を被告として東京地方裁判所に抵当権設定登記等の抹消登記手続請求等を骨子とする債務不存在確認請求の訴を提起(同庁昭和三〇年(ワ)第四〇九号事件)したところ、同裁判所は昭和三三年二月二五日に被申立人敗訴の判決をなしたこと、被申立人がこれに対し控訴を提起し、現に東京高等裁判所に係属中(同庁昭和三三年(ネ)第五〇〇号事件)であることは、いずれも当事者に争がない。そして、成立に争のない甲第一号証によれば、被申立人は右本案訴訟事件において、申立人とともに小暮松雄をも被告となし訴訟を遂行した結果、右裁判所において小暮松雄との関係においては、被申立人主張のような被申立人勝訴の判決を得たことが認められる。

仮処分債務者が、第一審裁判所において本案訴訟につき審理を受けた結果、実体上の理由により、その請求を理由のないものとして棄却された場合には、被保全権利の存在につき仮処分の際疏明した事実と寧ろ反対の事実の存在を看取するに足る事情が発生したものというべく、右判決が控訴審においてたやすく取り消されるおそれのあることが予想せられない限り、仮処分決定の存続を不当とすべき事態の生じたものと認めるのを相当とする。この点につき、被申立人は、右本案訴訟事件において、被申立人は小暮松雄に対する関係において勝訴し、その結果小暮松雄は本件不動産の所有者でなく、被申立人がその所有者たることが確定したから、小暮松雄が申立人に対しなした本件不動産の抵当権設定は無効であり、従つて申立人に対する第一審の勝訴判決は取消を免れないと主張するので審按する。甲第一号証によれば、被申立人は右本案訴訟事件において、小暮松雄に対しては本件不動産につき被申立人のためになされた所有権取得登記の回復登記手続を求めており、申立人に対しては小暮松雄が申立人に設定した本件不動産の抵当権設定登記の抹消登記等を求めているに過ぎないから、右訴訟は通常の共同訴訟であること明白である。そうすると、被申立人の小暮松雄に対する請求についての判断と、申立人に対する請求についての判断とが同一になされなければならないものではなく、又右事件の第一審判決中、小暮松雄に対し前記回復登記を命じた部分は被申立人と小暮松雄間においてのみ既判力を有し、被申立人と申立人間にまでその効力を及ぼすものでもないから、被申立人と小暮松雄間に右確定判決がなされたからといつて、これと別個に申立人と被申立人間の権利関係を判断することの妨げとなるものではない。しかも、被申立人と小暮松雄間の判決は、第一審裁判所において小暮松雄の自白に拘束された結果、被申立人勝訴の判決がなされたものであるに反し、被申立人と申立人間の判決は、同裁判所において右両者の主張及び証拠を慎重に審理した結果、本件不動産は小暮松雄の所有に属するものとし、被申立人の所有権を排斥して、被申立人敗訴の判決がなされるに至つたことは、前記甲第一号証により窺われるところである。以上により、被申立人の前記主張は採用できなく、その他右第一審判決が取り消されるおそれがあるとの、特段の事情が存することについては、その疏明資料はない。しからば、被申立人敗訴の第一審判決は控訴審においてたやすく取り消されるおそれはないものと思料するをもつて、本件仮処分決定は民事訴訟法第七五六条の準用する同法第七四七条第一項により、これを取り消すべき事情の変更があつたものということができる。

(二宮 奥野 大沢)

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